スタッフインタビュー

よかよかんの10年を支えてきた手塚登代子さんと川野真代さんにインタビューをしました。

手塚 登代子(てづか とよこ)

  • 小規模多機能ホームよかよかん 管理者
  • 看護師・介護支援専門員・認知症ケア専門士
  • 好きな言葉:お陰様で
  • 趣味:ガーデニング。お菓子つくり。特に、シフォンケーキにはこだわりがあり、その奥深さにはまっています。上手に焼けると物事がうまくいく気がするのです!

川野 真代(かわの まさよ)

  • グループホームよかよかん 管理者
  • 介護福祉士・介護支援専門員
  • 大切にしている言葉
    思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。
    言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。
    行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。
    習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。
    性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから。
    By マザー・テレサ

 

坂井:よかよかんでの10年を振り返ってみていかがですか。

手塚:一言じゃ言えません。・・・今は、来てよかったかな。援助論に、仲間に出会えてよかったと思っています。

川野:今はですね。開設して数年は、本当に苦しかったですね。いろんな意味で。

手塚:そうね。本当にいろいろあったけれど、多くのことを学んだ10年だったですね。

私は、小規模多機能ホームで管理者、看護師、ケアマネージャーをしています。だから、多くの利用者やご家族と出会い、お別れもあり、その都度、できる限り話を聴いてきました。

利用者の苦しみ、ご家族の苦しみ、スタッフの苦しみに出会い、聴くことしかできない無力な私ですが、それでも、励ましや感謝、あたたかい言葉をいただくと、今まで味わったことのない充実感を感じています。

川野:ですです。お叱りもいっぱい受けました。
でも、それも、きっと苦しみなんだなと思って聴いていると、関係が変わるんですよね。
学びの10年であり、成長の10年ですね。でも、これは、私の成長というよりも私の周りのスタッフの成長という意味です。

私は、リーダーとしてまだまだ未熟で力不足です。でも、その分、周りのスタッフが成長し、私を、現場を支えてくれました。
だから、新しい仲間がもっと増えると、もっともっと皆でいい援助ができるだろうと思います。
そんなこと妄想しちゃって。ひとりでワクワク、ドキドキしちゃうんです。楽しいだろうなーって。

手塚:10年後、川野さんたちの時代になったら、もっともっと、充実した現場になると思うよ。若い人は、それぞれが魅力的で、いい味出しているよね。それはね、実践にも現れている。

小規模にいらした利用者さんが、グループホームに入居後に、エプロン付けて台所に立って料理していたの。
「どうですか」って尋ねたら「仕事があって忙しいのよ」って語ってくれたのよ。
そのうれしそうな表情を見て、すごいなって思った。小規模じゃお客さんだったんだよね。

でも、グループホームでは‘暮らす’ことを実感されていると思うよ。
そして、生きている意味や価値が生まれ、充実しているんだと思う。

川野:そんな風に言っていただけて、うれしいです。
でも、そこに至るまでご本人もいろいろ葛藤があったと思うんです。その葛藤をスタッフが聴いてくれたから、少しずつ変わっていかれたんだと思います。利用者さんは、皆さん、いろいろな葛藤、苦しみを抱えています。言葉にされないだけです。

川野:以前、利用者のおひとりが「海の底で、手探りをしているようだ」って、認知症を生きる苦しさをポロっと語れた言葉が、「よかよかん日記(注)」に書いてあったんです。

(注:よかよかん日記とは、いわゆるケース記録のこと。しかし、よかよかんでは、〇〇さんがよかよかんで過ごした、その一日一日の様子を本人に代わって日記として記録したものと考え、‘〇〇さんのよかよかん日記’としている。)

手塚:私も、同じような言葉を聴いた。「宛先のない旅をしているの」って、その方は言っていたの。

坂井:「海の底で手探りをしているようだ」「宛先のない旅」ですか。深い言葉ですね。 認知症の人の苦しみは‘想い出せない苦しみ’に由来すると言われますね。

手塚:‘今’が想い出せない、‘ここにあること’が想い出せない、‘私’が想い出せない。・・・海の底で、手探りで探していたものは、過去の想い出や記憶とかじゃなくて、きっと、その人自身‘私’だったんだろうなって。川野さんはどう思う?

川野:手塚さんは、その人が、海の底で、手探りで探していたもの。それは‘その人’自身だったって、思うんですね。

手塚:そうそう。・・・今、反復したでしょ!

川野:あっ、はい。その方は、「一日、何回もどうしたらいいの?」って繰り返し言われる方でした。
だから、私たちはその言葉に反応しちゃって「何をしたいの?」「どうしたいの?」って聞くんですが、何も返事が返ってこない。

今、振り返ると、それは「わかってもらえない」という苦しみのメッセージだったのかもしれません。もし、今だったら、もっと話を聴いてあげられたかもしれません。

手塚さんが聴かれた「宛先のない旅」っていうのは、先の見えない時間性の苦しみですか?

手塚:そうね。認知症の人も、自分ではこうしたい、こうしなきゃときっと考えている。けれど、周りから、違うとか、そうじゃない、早くと急かされ、否定される。そして、いろいろなものが見失われていく、わからなくなっていく。

その方が認知症という病気になったから宛先がなくなったのではなく、周りに、管理され、抑制され、否定され、だんだんと生きる宛がなくなってしまったんじゃないかって思うの。

まさに‘わかってもらえない’という‘孤独’の苦しみ。考えただけで、本当に苦しいよね。

坂井:その認知症の人の‘わかってもらえない苦しみ’、‘孤独の苦しみ’が、私たちの援助の焦点なんですね。そして、目指すケアは、認知症の人の自律の回復ですね。

川野:よかよかのホームページに、よかよかんの3つの強みって書いてあるじゃないですか。

1,理念が明確である。
2,だから、ケアに意味づけができる。
3,意味づけできるから言語化できる、つまり、振り返ることができる。

これは、本当に大切なことですよね。

手塚:よかよかんの理念は対人援助論に基づいているから、ブレない。
川野さんもそこから一切ブレないもんね。そして、スタッフは共通言語を持っているから、お互いが理解し合えると思うの。

川野:はい。そのことは他にはない‘強み’だと思います。
理念が理想論でなく、自分が何をするのか、、なぜするのか、どのようにするのかが具体的で、皆の共通言語としてあるから、振り返ったときに、判断や選択に悩まず、考えることができる。言い方は変ですけど、すごく楽なんですよね。悩まなくていい、考えなさいって。

手塚:悩まなくていい、考える、なんだよね。そして、考えるから、成長するって感じかな。

川野:ですです。悩んでいるとブレるし、不安だし、はっきりしないし、しんどいじゃないですか。
でも、もし、判断や選択が間違って失敗したとしても、なぜ、そのようにしたのかってことを、言語化できるから、振り返ることもできる。
振り返ることができるから、課題は明らかになる。

だから課題を次に活かすことが出来る。だから、成長できる。理念がいかに大切かってことですよね。

坂井:これから、よかよかんを目指す仲間に対してメッセージを送ってください。

川野:もし、このホームページを読まれて、よかよかんが気になった方がいたら、是非、よかよかんに見学に来てほしいです。
奥薩摩だから、ちょっと、遠いですけどね。

ネットとか、周りの情報とか、企業調査しても、実際見てみないと分からないし、雰囲気って実感できない。
場合によっては、ちがうなって思うこともあるじゃないですか。

そして、やってみたいって思われたら、大歓迎します!
一緒に頑張る、理念を共有できる仲間が増えるって、こんなうれしいことはないですよ!!

手塚:今、介護、ケアの現場で、こんはずじゃなかったって思いながら頑張っている方、もう、介護の仕事はもう嫌だって苦しんでいる方、現場を離れてもどこか悔いが残っている方がいたら、一度、遊びに来てほしいです。

できれば、お電話をいただいてからだと、こちらも準備できますから。せっかく足を運んでこられるのですから。
こちらもいっぱい話を聴かせていただきたいです。

そして、もし、よかったら、一緒に援助をしてみませんか?!
そうやって、よかよかんにたどり着いた方なら、きっと、何かが変わると思います。全力でサポートします。